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丸山浩路さんの著書に「百万人の手話」という本があります。
初版は昭和55年ですからもう40年近く前の本ですが、今の時代にあっても学ぶべきことがたくさんある名著です。
「恥ずかしい話」という印象に残ったコラムがあります。
丸山さんが聾唖の友人と電車に乗っていて、二人で手話で会話しているときのことです。
乗り合わせていた五歳くらいの男の子が「ね、ね、あの二人踊っている。」そんなことをお母さんに話しました。
お母さんは「いけません。あれは耳の聞こえない人の手真似というの。耳の聞こえない人達の言葉なの。」そんな説明を男の子にしていました。
続けてお母さんの声が聞こえました。
「ね、あなたも遊んでばかりいて勉強しないと、あんなふうになるわよ」
・・・・恥ずかしい話です。
丸山さんは聴者ですが、このお母さんは二人ともろう者だと思って発した言葉なのでしょう。ろう者や手話が今よりもはるかに無理解で偏見や蔑視があった時代です。
とはいえ、差別の連鎖は大人が、そして親が生み出すものです。
私は娘と手話で会話していた時、全く対照的なことがありました。
3年ぐらい前のある日、娘と病院の待合室にいた時のことです。
娘が「ジュースが飲みたい」と言い、私は隣の薬局に薬を取りに行かなければいけなくて「後で」と返事をした時に近くにいたお母さんの声が聞こえてきました。
そのとき待合室にいたあるお母さんが私たちのやり取りを見て
「お手手でお話しているよ~。 かっこいいね~!」
と2人の子どもたちに話していました。
子どもたちも「すごーい」って感じでこちらを見ていました。障害があるからとかではなく自然に子どもたちに話していたことが、とてもうれしかったです。
こんな素敵なお母さん(大人)が増えてくれたら、社会はきっと変わります。