北都銀行新入行員の皆さんへ研修会の講師をさせていただきました♪
平成30年4月9日、北都銀行新入行員の皆様へ研修会での講師をさせていただきました。昨年に引き続き、聴覚障害や手話のことを知っていただく機会を設けていただいて北都銀行様にはとても感謝しております。
その中から今年新たにお話しした内容を中心にご紹介します。
自己紹介のあと、最初に「聞こえない人が来たらどのような配慮が必要か?」をグループディスカッションしていただきました。
それぞれグループに分かれて真剣に考えられて3分という短い時間でも様々な意見や大切なことを回答してくれました。自分だったらどうするか?まずは考えることが第一歩です。
それらを踏まえて、mami satoさん(昨年9月18日の講習会&WS「災害対応」の講師でろう者です。)のブログ「ねこちゃんねる」の記事から事例を紹介しました。
私が初めてその歯医者に予約する時、 受付に耳が聞こえないということ、 筆談が必要だということを お伝えしたうえで予約を取ったのですが、
当日私が歯医者に行くなり、受付から私に対して
「どうすればよいのか?」
ということを積極的に聞いてきてくれたのです。
それだけでなく、私が帰ったあともその情報を共有していたようで、 2回目、私が歯医者へ行った時は 全ての歯科助手などが同じ対応をしてくれていました!
これにはびっくり・・・。 こういうことができる所は嬉しくなるし、 通いたくなりますよね 笑
ねこちゃんねる「私がある歯医者をお気に入りになった理由」から転載
初めての時は「耳が聞こえません」「筆談でお願いします。」などを伝えなければなりませんが、出来れば1度で済ませたいもの。この歯医者さんはスタッフ全員が情報を共有することで、その後のスムーズな対応に繋がりました。
もうひとつ大事なことは「尋ねてくれたこと」です。一括りにろう者や難聴者といっても聞こえ方や必要な配慮もそれぞれ異なります。「どうすればいいのか?」を積極的に尋ねることで、相手に寄り添った対応が出来るようになるのです。
mamiさんのブログからは「筆談は簡単にした方がもっと気楽に関係を作れるかな」も活用させていただきました。こちらは、後ほど改めて紹介させていただきます。
かつては手話そのものが差別の対象でしたので、手話の歴史も知っていただきたいと思いました。平成25年に全国で初めて手話言語条例が成立した鳥取県手話言語条例の附則から紹介しました。
平成29年4月1日に「秋田県手話言語、点字等の普及等による円滑な意思疎通の促進に関する条例」が施行されていることも紹介しました。手話言語条例は全国で広がり続け、4月6日までに178自治体で成立(全日本ろうあ連盟調べ)しています。
「京都市手話言語がつなぐ心豊かな共生社会を目指す条例」から、京都市が観光都市として「もてなしの心」を持ち、手話を必要とする観光旅行者などへの対応に取り組まれていることも紹介しました。
下の画像は仁・実さんの「耳が聞こえる人が基準の社会の中で」からコラムを紹介している様子です。
その他にも、耳が聞こえない人が感じている困りごとや、娘のエピソード、指文字や聴導犬などを紹介させていただきました。
最後にイラストや写真を見せながら「おはよう」「こんにちは」「こんばんは」「はじめまして」などの基本的なあいさつの手話を紹介しました。
栗田一歩様の作品「ようこそ」も使わせていただきました。「いらっしゃいませ」という手話にもなります。Sigb Lab.というサイトからたくさんの素敵な写真作品を発信されています。
研修会には次の方から資料や画像を提供していただきました。この場を借りて感謝申し上げます。
mami satoさま(山形県)
栗田一歩さま(京都府)
Reem Mohamedさま(日本⇔エジプト)
仁・実さま(千葉県)
Y-SMILE.株式会社さま(広島県)
【紹介順】
秋田県、鳥取県、京都市
研修会の様子はNHK、ABS、AKTでそれぞれニュースになり、新入行員の皆さんがあいさつなどの手話を覚えようとしている姿が映し出されました。
4月10日の秋田さきがけ新聞でも記事になりました。記事でも触れられていますが、北都銀行様では窓口でのコミュニケーションをよりスムーズにするツールとして「コミュニケーションボード」が全営業店に設置されています。
<秋田魁新報社許可 180427-066号>
また本店営業部にはCOMUOON(コミューン:声が聞こえやすくなるスピーカーです)が設置されていて、ハード面とソフト面から聞こえのバリアフリーへの対応に取り組まれています。
(本店営業部に設置されているCOMUOON)
この研修会が聴覚障害や手話への理解へつながる機会となってくれれば嬉しいです。そして手話をひとつでも覚えて使って「通じ合う」ことを体験して欲しいなぁと思います。
私自身にとっても、貴重な機会となりました。ありがとうございました。
平成29年4月11日、北都銀行本店にて新入行員30名の皆さんへ手話講習会の講師をさせていただきました。私にとっても初めての手話講習会でうまく伝えきれなかった部分もありましたが、改めて内容を整理してみました。青枠でピンクのうずらフォントの文章は後で改めて思った事です。
手話講習会とはいっても1時間で覚えられる手話表現は限られています。ほとんどの方が初めてだと思いますので「なぜ手話なのか?」「ろう者や難聴者にはどんな配慮をすればいいのか?」を知っていただく機会になればと思いながら進めました。
あいさつに続いて、まずは次の3つの質問から始めました。
①の質問では、残念ながら挙手をされた方はいませんでした。
②は「ろう者はみんな手話が出来る」と誤解されているのかと思い質問してみましたが、こちらは全員が正解でした。
➂は私自身がよくされる質問なのですが、やはり多くの方が世界共通だと思っていたようです。手話は世界共通ではありません。
かつてテレビドラマで「星の金貨(酒井法子主演)」や「愛していると言ってくれ(豊川悦司主演)」や「オレンジデイズ(柴咲コウ主演)」などが放映され手話が広く知られるようになりました。今なら漫画や映画にもなった「聲の形」でしょうか。「手話言語条例」が全国の地方自治体で施行され、その取り組みなどがニュースで取り上げられることも多くなりました。
とくに「手話言語条例」を全国で最初に制定した鳥取県では手話ハンドブックを配布したり手話パフォーマンス甲子園が開催されていて、HPもとても充実しています。
新入行員の皆さんへの配布資料にも
鳥取県HPより手話学習プリント(挨拶、指文字).pdf (0.4MB)
を使わせていただきました。
手話言語条例(情報・コミュニケーション条例含む)は、平成29年3月31日までに97自治体(1府12県84市町村)に広がりました。そして今年3月9日には秋田県でも成立しました。
上の画像は平成29年3月9日の秋田県議会で条例が可決成立後の集合写真ですが、「手話は言語」や「手話は命」という横断幕が掲げられています。なぜこの横断幕にある言葉が掲げられるのか、それは手話が排除されてきた歴史が影響しています。重い話ですが「ろう者たちの心の叫び」ですので少し時間をとりました。
ろう教育において「口話法」が推進され手話が排除されてきたこと、口話法は決して万人向けの方法ではないにも関わらず成功例が語り継がれてきた事、結果として②の質問の答え「ろう者がみんな手話が出来るわけではない」につながったことです。
手話の最大の弱点は「手話を覚えても社会では通じない」です。①の質問で手が挙がらなかったように、ほとんどの人は手話が出来ません。また以前ほどではないにしても、手話に対する偏見や理解不足な部分もあります。手話言語条例は、ろう教育の反省もふまえ、手話を言語として普及しようと今、全国に広がっているのです。
ろう者や難聴者、中途失聴者といっても人によって聞こえ方はそれぞれ異なります。娘のように生まれつき耳が聞こえない子もいれば、何らかの理由で失聴した中途失聴者もいます。加齢による難聴によって耳が遠くなったお年寄りもいます。
「聞こえない・聞こえにくい」は見た目では分からないし、こちらの説明に対してうなづくことで聞こえたふり、分かったふりをされることもあります。
FBを通じて交流しているReem Mohamedさんのコラム№7からいくつか抜粋して紹介しました。
①窓口でマスクをされると口が見えなくて読唇ができない。
②また逆にろう者はみんな読唇が出来ると思われている事
➂補聴器をつけていると聞こえていると思われて早口で話される事⇒静かな場所で1対1でなければ補聴効果は限定的です。
④聞こえないから手話が出来ると思われている事⇒これは質問②でみなさんが分かっていたので良かったです。
また「話せるから聞こえているだろう」と勘違いしてトラブルになるケースも多いので、ろう者や難聴者が話せるからといって「全てを聞き取れて理解しているわけではないこと」を知っていただきたいと思いました。
職場などでまわりが聴者だけだとちょっとした雑談で笑ったりしているのに会話に入ることが出来ずに孤独感を感じることがあります。飲み会でもみんなが盛り上がっている内容が分からず楽しめないことがあります。また聞き漏らすと「集中力が足りない」と言われることなどを話しました。
<「耳が聞こえる人が基準の社会の中で」のコラムからも活用させていただきました。
手話の魅力はお互いの顔をきちんと向き合わせることです。確かに情報だけなら筆談でもメールでも可能ですが、相手を見ないと伝えられない手話はお互いの距離感が近くなります。
また離れていても相手が見える距離なら、手話で話すことができます。
娘のエピソードから、たこ焼き屋さんでたこ焼きを買った時、お店の子が娘の方を見て手話で「ありがとう」としてくれました。娘は大喜びで「また行きたい」と言ってました。
海外に一人で行って周りが外国人・外国語ばかりの時、日本語で話しかけられたらうれしくありませんか?ろう者・児は常に外国にいるようなものなのです。
お金に関わることですから重要なことは筆談や(北都銀行さんで使用している)コミュニケーションボードでいいと思います。でも、あいさつやお礼に手話をつけるだけでもとても喜ばれることでしょう。
紹介したい基本的な手話は、さきほどの「手話」や「おめでとう」「ありがとう」のほか、私が描いた手話カレンダーのイラストなどを題材にしました。
2016年手話カレンダーの「いたい」「だいじょうぶ」「おだいじに」や2017年版医療機関向けの「いつ」「分かる」、普及版手話カレンダーにある「朝」「昼」「夜」「あいさつ」の手話単語と、2つを組み合わせて「おはよう」「こんにちは」「こんばんは」になることなどです。
何人かの行員には実際に前に出てやっていただきました。お名前を伺ってその方の「名字」や、「いらっしゃいませ」などを紹介しました。
強調したくて同じ表現を繰り返す方もいたので、手話表現によっては例えば「東」を2度繰り返すと「東京」になって意味が変わってしまうことも紹介できました。
「北都銀行」の手話表現は「手話で北+指文字のト+手話で銀行」ですが、「手話で北」が皆さんにはちょっとカッコよく見えたみたいで反応が良かったです(#^^#)
ちょうどNHKニュースこまちやABSnews every.のニュースにもなったので、和気あいあいとした雰囲気の中で行われていたことは伝わったかなと思います。
4月1日から北都銀行泉支店さんで開催しているロビー展の紹介もさせていただきました。4月1日は秋田県手話言語・意思疎通支援条例(略称)の施行日でもあります。たくさんの方の理解・啓発の機会になればうれしいし、5月からはまた別の支店で開催する予定です。
最後は皆さんに「手話でありがとう」と(私は聴者ですが紹介した)手をひらひらさせる「ろう者の拍手」で見送っていただきました。
私自身もとても貴重な機会をいただきました。ありがとうございました。